会長挨拶
土地家屋調査士制度の制定に至る端緒は、明治5年、地所永代売買の解禁が実施され、土地を自由に売買することが可能となり、私有権も認められたことに伴い、不動産登記制度(不動産の所有権を記録・公示する制度)が制定されましたことにあります。戦前までは、不動産登記は不動産の権利関係のみを記録するものであり、不動産の物理的な位置・形状などは 税務署が課税を目的として土地台帳・家屋台帳として把握しておりました。現在のように権利関係と土地の現状記録を統合して登記簿として登記するようになったのは、昭和25年以降となります。不動産の測量・調査をする業務は 昭和初期から土地調査員が活動しておりましたが法的な位置づけがなかったため、国の制度とする運動が行なわれていました。土地家屋調査士制度は、松本税務署の土地調査員による「調査員法」の制定運動がきっかけとなり、時の逓信大臣・降旗徳弥氏をはじめ、多くの先人のご尽力と粘り強い努力により、国民の社会生活の基本となる土地・建物の権利の明確化に寄与する目的をもって昭和25年7月31日、土地家屋調査士法が制定され誕生しました。このように土地家屋調査士制度にも不動産登記制度にも歴史があります。制度の歴史やその土地が発生した経緯やその経過を大切にしながら土地家屋調査士業務を全うしてまいります。
また、測量方法やその技術革新には目覚ましいものがあります。江戸期・明治期では竹や縄といったものを使用し測量しておりましたが、昭和期では平板測量を用い、土地の面積を計測しておりました。昭和末期においてはトランシットで角度を測り、光波測距儀により光を用いて距離を測定することが主流となりました。現在使用されているトータルステーションはトランシットと光波測距儀の機能を併せもった機械です。このトータルステーションを使用して現地を測量することが主流となっておりますが、最近ではGNSS測量という人工衛星を利用して地上の現在位置を計測するシステムを利用した測量方法も行うようになってきました。このように、時代とともに測量方法や測量技術は目覚ましく変化しており、この変化に対応できるよう会員間で情報を共有し、技術の研鑽を重ねてまいりたいと思います。また、民法や不動産登記法等の法改正も目まぐるしく行われております。このような法改正にもしっかりと対応するべく研修会を開催し、会員の知識や資質の向上に努めてまいりたいと思います。
令和5年から所有者不明土地管理制度が始まりましたが、空き家や相続登記未了による所有者や管理者が不明な土地は多くあり、所有者等を探すことが困難な土地があります。このように所有者等が不明なことを原因として境界確定が困難な土地が増えることのないよう、今まで同様、現地に境界標を設置し、地積測量図を法務局に備え付けることで、土地の取引性を損なうことのないよう努めてまいります。
土地家屋調査士は、所有者等の依頼を受けて不動産の表示に関する登記に必要な調査・測量を行いその位置・形状を明確にし、登記手続きの円滑化に資することを専門とする国家資格者です。土地家屋調査士の使命として土地家屋調査士法第1条に「土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もつて国民生活の安定と向上に資することを使命とする。」と規定されております。明治期から続く土地の繋がりや土地の歴史を読み解く専門家として知見を発揮し、法改正や測量技術の変化にも対応し、時代に沿った土地家屋調査士として、その使命を全うし、国民の付託に応えられるよう、これからも研鑽を積んでまいります。
富山県土地家屋調査士会
会 長 石山 努
